よってたかって恋ですか?

 “漆黒の天幕にさえ背を向けて…”




 *すいません、
  腐描写満載のR指定ものです。
  そういうのは おイヤな方、
  全速力でお逃げください。



ともすれば、自身の身のうちに何かしらの深淵を見いだして、
じっと黙したまま そこに真理を追い求める哲学者のように。
憂いをひそませた眉間をやや険しくしかめることで、
精悍なお顔を鋭くも冴えさせている。
そんな意外な気色を含んだ彼の横顔が、
だがだが もはや愛しく思える不思議さよ。

 “こんな顔も出来るんだ…。”

小さき人の和子らを天乃国へと迎えるために、
どんな罪も許そうと懐ろ開き、
汲めども尽きぬ慈愛をふんだんに降りそそぐ光の眷属。
特にイエスは、人を疑わず警戒もせず、
あまりに無防備なものだから、
慎重堅実なブッダにすれば、
あまりに危なっかしくて放っておけなくて。
それもあってのこと、
先達として、もしくは兄のように
自分が守って差し上げようというスタンスで
接していたのにね。

 「?」

あまりに じいと凝視していたからか、
こちらからのそんな気配を拾って
…それからそれから。
軽く目を見張り、
どうかした?と問いたいような、
そんな瞬きをするイエスであり。
直前までの物思いなお顔はどこへやら、
口許も和ませ、<屈託のないいつもの表情に戻ったの、
ちょっぴり残念と感じたブッダだったものの、

 “でも…。////////”

だからといって、
頼もしさが雲散霧消したわけでもない。
宵も深まったのでと布団を敷いて寝間を取り、明かりを落とした部屋の中。
さすがにもう寒くてと、
窓もカーテンもぴたりと閉ざした六畳間は、
鼻をつままれても判らぬほどとの、
真の暗闇ではないながら、
それでも漆黒の夜陰が垂れ込めていて。
それが怖いと恐れるような心許なき幼い童でなし、
何となれば荒ぶる獣の牙にさえ動じないほど
頑強気丈な心を持ってもいるはずが、

 この身をすっぽりと覆うよに
 尋の長い腕でくるまれ、
 しっかりした深みのある懐ろに
 掻い込まれていると

 「………。/////////」

怖いものなんてありはしないが、
それでも…何とも言えぬ安堵を感じるから不思議で。
一つ毛布に一緒にくるまり、
大好きな温みの胸板の端に
ちょこりと頭を乗っけるよにして。
ついのこととて、細い細い吐息をついてしまえば、

 「どうしたの?」

寒い?と深みのある声で、螺髪に吐息がもぐるほどのすぐ間近から
そおと掠れた声をかけられて。
さすがにもう
“ひゃあっ”と肩が跳ね上がるようなことはなく。
ただ、何とも言えない甘くて切ない気持ちが、
胸のどこかから じわりと暖かく染み出して来るのが止められなくて。

 「あのね?
  今だけは、守られてていいんだなって」

どんな艱難辛苦を前にしても
毅然と頭首を上げていられだろう、
堅実強固な自負に変わりはないが。
今だけは キミにすっかり凭れて良いのだと、
そんな甘えたことをこっそり認めていられる幸せに、
押さえ切れない含羞みが止まず。
自然と口許がほころんでしょうがないのがどうにも恥ずかしくて
含羞みが涌くという悪循環。
しかも、

 「もお、何を言い出すかなぁ。」

慣れないことだからだろう、
顔を隠したいよな、もぞりとした身じろぎをするブッダなのへ。
苦笑とも窘めとも取れるよな、
もうもうという声が掛けられて。

 「どんな苦しいことでも、
  しっかと耐えられる人なのに」

私のほうこそ、
そんなキミを守りたいっていつだって思ってる。
なのにいつだって、
力も心根も足りなくて歯痒くてと。
そんな焦れったさを、口先だけのものではないとしたいのか。
頼もしい手を二人の間にすべり込ませて来、
ちょっと乱暴だったが、
想いびとのやわらかな顎の先を探り当てると
そこへと添えて。
いやいやと かすかに抗うのごと掬い上げ、
ちょっと窮屈な格好ながら、
愛しい唇へ自分の唇重ねて、
この想いがもっと深みへ届きますようにと、
優しいが強引な口づけを何度も捧げたのでありました。





     ◇◇◇



しっとりと瑞々しくて、
なのにさらさらしている格別の手触りがともすれば不思議。
それほどにきめの細かい肌は、
向こうから吸いついて来るような絖絹の感触を保ち。
そしてその下には、ふわふかに柔らかでやさしい肉付きがまとわれていて。
でもね、ただただ頼りなくやわらかいのではなくて、
自分なんかより充実した肉置き(ししおき)をしているブッダなので、
我慢の度合いによっては、
くっとその筋肉が締まるのが伝わってくる。

 向かい合ったそのまま、
 相手の肢体へ腕をからめ、
 取り込むように抱き締め合って

互いが相手へ溶け込んでしまうよな一体感を感じつつ、
ああ気持ちいいなと つい呟くと。

 「…わ たしも。////////」

言葉にする段であらためて何か意識したものか、
今更のためらいが舌を搦め捕りかけたようだったが。
それでも…内から殻を圧し割るように
えいと、口にした彼で。

  ぎゅうと抱きついていいんだって。
  そしたらイエスの方からも
  くるみ込むように
  抱きすくめてくれるから…

こんなにも間近なのにネ、
それとも“だから”だろうかしら。
掠れるような声で内緒話みたいに囁いて、
柔らかい頬をこちらの胸へ<もじもじと擦り付ける。

 「いい匂いがして、
  それと重みもネ? 
  何ていうのか、気持ちがよくて。」

堅くてごつりとしている大きな手や肩口の雄々しさが、
何とも頼もしくって安心出来るのと。
言葉だけじゃあなく、
うっとりお顔を和ませて言う彼なものだから、

 「えー? 頼もしいはないでしょう。
  それは盛り過ぎだよぉ。」

このごろ、何でか私を買いかぶり過ぎてないかい?と、
ついつい言い返してしまったところ、

 「盛ってなんかないよぉ、何よそれ。」

可愛らしい含羞みに もじょもじょしていた口調だったのが、
そこはさすがに撤回してよとの気概が立ち上がったからか、
ちょっぴりエッジの立った声になったのが感じられ。

 “あああ、いかんいかん。
  せっかくの雰囲気が
  台なしになっちゃう…”

毛布の中にて意気軒昂になりかかる、
伴侶様のオーラの変化を感じたヨシュア様。
夜陰にも多少は慣れただろ
互いの視野を重ねるよにして視線を合わせると、

 「?」

不意に見つめて来たこちらだったのへ
“え?”と大きな双眸を見張った彼なの見据えてから、
自分の口許に人差し指の先をくっつけて。
しぃと、黙ってという合図かと思ったそれが、だが、
指の腹で自身の唇をちょんと擦ってから
伸ばされたまんまでこちらへ向けられて…。

 “……あ。//////////”

視野の下へと消えたそのまま、唇へと触れた乾いた感触。
そこでやっと、

 「しぃだよ、ブッダ。」

命じたというよりお願いという声音と、
ほわり柔らかくほころんだ笑顔が囁く。
そんな甘いの聞いた途端に、

 「〜〜〜〜。/////////」

総身が かっかと茹だるのも、
鼓動が弾みをつけて躍るのも、
いつものこととて甘悔しくて。

 「…あ。」

イエスの小さな声で、
髪がほどけてしまったのを感じつつ、
ああもうもう狡い狡いと、<頬を赤くし、唇咬んでしまう。
まだちょっとだけイエス様には敵わぬところも多かりしの
初心な如来様なようでございます。





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